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椿、ブラウの方へ場面は移り。
「いい?椿ちゃん。コレは基本だからさ。あの的を目掛けて、肩の力を抜いてやってごらん?」
「う、うん……。…火の守り神よ、我に御身の力を授けん…鋭き矢となりて、敵を討て……ファイアアロー!」
集中して的へ差し出した指の先には一瞬火が集まるが、直ぐに煙になって消えてしまう。
「…失敗…しちゃった…」
「大丈夫大丈夫!自然に身を任せれば、すぐ出来る様になるって!」
「それが……それが、簡単に出来ないから失敗してるんじゃない」
ため息交じりの椿にブラウはあくまで明るい。
椿はその態度が不満だった。
「大丈夫だって!椿ちゃんなら、すぐ出来るから!ね?」
「……楽観的過ぎ」
大丈夫、ばかり繰り返すブラウにぼそりと椿は呟いた。
『…確か、他の皆は基本は出来る様になってるって聞いてる……出来ないのは、あたしだけ…。如何して、出来ないのかな……あたし、役立たずみたい…』(
・・・・・
「椿、今日は、椿の好きなハンバーグにしようか」
「姉さん…?何時、戻ってきたの?それより、今まで何処に…」
「何を云ってるの?変な椿ね。…それじゃあ、私は買い物に行って来るわね。直ぐに戻るから…待っていて……椿…」
「姉さん!?待って…行かないで…!」
微笑んでいた椿の姉は、か細い声になり、すぅ…と消えてしまった。
「姉さん…?姉さん!」
『椿……助け、て…』
「姉さん!?何処に居るの?如何したの!?」
『助けて…助けて…』
「姉さん…!あたし、如何したらいいの?如何したら、姉さんは助かるの…?ねぇ、姉さん…!」
『……貴方が、死ねばいいのよ』
「…え…?」
『ほら、死んで…椿…』
「姉、さん…?」
それまで姿のなかった姉・牡丹が目の前に現れる。
手に、刃物を、持って。
ゆっくりと椿に近づいてくる。
「い、いや……やめて…!」
椿は何故か動けなかった。
「私の可愛い妹…私を助けて…?……その命と引き換えに」
優しい声色。
だが、冷たくて。
刃物を振り翳す牡丹。
「い、いやぁぁ!!」
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「椿ちゃーん?っと…寝てる……ん?」
「姉さん…やめ、て……!」
「椿ちゃん…。…夢に惑わされちゃ駄目だよ…」
優しい声色でブラウは言う。
そしてそっと椿の手を握った。
瞬間、椿が目を覚ました。
「っ…いやぁ!」
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