第1章

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海は波に向けていた瞳を憎悪のこもった瞳に変えて由佳里に向けた。 「…煩い。君、何様のつもり?何も判ってない癖に……いい?双子だからこそ、思いも近いんだよ。僕が波を大事に思ってる様に、波も僕を大事に思ってる。他の奴なんて要らないんだよ。他の奴等は、僕等から何時か離れていく……でも、僕と波は永遠に離れない。離れる事なんて、ありえない。そんな事、許さない。僕等は、お互いだけを信じてればいいんだ。だから、二度と関わらないでくれる?別に…無理やり、君を僕等と関わらせない様にする事も出来るけど。…どうせなら、痛い思いなんて、したくないだろう?」 「海、何て事云うの!? 由佳里さんには、私から話し掛けたの。由佳里さんは何も悪くない。責めるなら、私を責めればいいじゃない!!」 「波……っ…」 波が自分に反発したことに驚いた海は怒りどころではなく、冷静さをなくし、その場から去ってしまった。 あまりにも、衝撃が大きすぎて。 「……ごめんなさい、由佳里さん…海が凄く失礼な事…」 暫くの沈黙。 破ったのは波だった。 今にも泣きそうな程申し訳なさそうに波は由佳里に言った。 「別に、謝らなくてもいいわ。少し、驚いたけど……貴方を大事に思ってるのを、感じたし…」 「…海、昔はあんな風じゃなかったんです……私達の両親が…親戚の人に度重なって騙されて……そんな両親を見て、海はどんどん人を信じられなくなっていったんです。人を信じたりするから騙される、って思ってるみたいで……本当の海は、もっと、優しい人なんです」 「…大事に思ってるのね、海君の事…」 「海の事、凄く大事です。小さい頃から、ずっと一緒だったし…。…だから…今の海を見てるのが辛いんです……あんな風に心を閉ざして…まるで、自分を責めてるみたいで……私、そんな海を見てるのが…辛くて…凄く、哀しいんです…」
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