第1章

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「人は、そう簡単には変われないわ。……でも、ゆっくりとなら、必ず変われる。海君には、貴方が居るんだもの。変われない訳がないわ。貴方のその強い思い…決して失くさないで。それで……ゆっくり…海君に教えてあげましょう?信じる心……大切に思う心……勿論、嫌な面も人間はあるわ…でも、それも含めて、人間の素晴らしさだと、私は思ってる。だから…それを教えてあげましょう?どれだけの時間を費やしたとしても………必ず伝わるわ。波、貴方のその思いがあれば…必ず」 由佳里は優しく、それでいて諭すように告げた。 きっと海にも、波の想いが伝わる、と。 「由佳里さん……はい…私、頑張ります。海に判って貰える様に……」 「大丈夫よ、貴方なら。但し、波?急いでは駄目。ゆっくりと…ね?」 「…はい!」 ・・・・・ 「…うん、これぐらい…かな」 「…波…何で……如何して、僕以外の奴をあんな風に庇ったりするんだよ………僕等には、僕等以外、要らないのに…如何して……!」 桜が花を摘んでいると海が荒だたしくやってくる。 ぶつぶつと、納得いかない、といったような様子の事を呟きながら。 「あ……な、仲原、さん?あ…こ、これじゃややこしいですよね……え、えぇっと…う、海君、だよね…?ど、どうした、の?な…何か…その…辛そう、だけど…」 桜は最初驚くが、海の様子が心配で声をかけた。 だが海は、 「……何でもない」 と、冷たく返すだけだった。 「…あ…じゃ、じゃあ…その……少し、話さない…?こ、此処で逢ったのも……あの…きっと…何かの縁、だし…」 「…嫌だね。僕に構わないで貰える?」 「……で、でも…あの…」 「…煩いな……放っとけ、って云ってるんだよ!人語も理解出来ない訳!?」 どん、と近くの岩を蹴りながら海が声を張り上げた。 桜はびくっと身を縮めた。
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