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「っ…!……じ、実は…ボク、大きな独り言を云う癖があるんだ……だから…コレも、独り言…。…ボク、昔から凄い上がり症だったんだ…それで、クラスでも浮いてて……話したいのに、話せなくて…凄く悩んでて……そんなボクに、「もっと物事を軽く考えてご覧」って云ってくれた人が居たんだ…。勿論、直ぐにそんな風に考える事なんて出来なかった…でも、ある日……ちょっと勇気を出してみたんだ。「おはよう」って…それだけを云っただけだったけど……何人かの人が、言葉を返してくれたんだ…。凄く、嬉しかった。…今でも、上がり症は治ってないけど……でも…ほんの少し、勇気を出せば…周りは変わる……ボクも、変わる……そう、気付いたんだ…」
「……」
「それと…人は、困ってる時は助け合うものだ、って…判ったんだ…」
「……」
「……長い独り言云っちゃったな…。…お花さん、綺麗に咲いてね…」
「……それぐらい…僕だって、判ってるよ…」
桜の【独り言】の後、海は聞こえぬほど小さくつぶやいた。
本当は判ってる。
波の世界を狭くしてるのは自分だと。
だけど、そうしないと波が離れて行ってしまうような気がして。
波に離れられたら僕は――。
「…海!」
「…波…?如何して…」
遠くから聞こえた波の声に考え込んでた頭を上げる。
すると波と由佳里が此方へ歩いてきていた。
「海の事が、心配で……ごめんね?カッとなっちゃって…つい、あんな事……」
「……波…」
「あ、あのね?由佳里さんも、一緒に探してくれたの、海の事…」
「…え…?」
「私が、如何しても、って頼んだの」
「何で…」
「…貴方に、謝りたくて。貴方の事も考えずに、波を引き離す様な行動を取った事…如何しても、謝りたかったの……ごめんなさい…軽率だったわ」
由佳里は申し訳なさそうに言葉を紡いだ。
海は何かを言おうとするがうまく紡げない。
「海君…ちょっとの勇気、だよ」
その時、桜が海にだけ聞こえるようにそっと囁いた。
海は拳をぐっと握りしめる。
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