第1章

2/5
前へ
/5ページ
次へ
七話【思い出したくない過去】 「ちょっと其処の阿呆面魔法使い」 「…誰が阿呆面だ…。…何だよ」 「優しいロート様からのご忠告よ。有難く聞きなさいな。…救世主様を、あんたの妹と混合するのは止めなさい」 「…別に混合なんてしてない。大体、お前には関係ないだろ」 「確かに関係ないわ。だけど…今のままじゃ、あんた…必ず後悔する。同じ事を繰り返す可能性だって…」 ・・・・・ 「ネーベル!」 「お兄ちゃ、ん……」 ブラウと同じ金の髪の少女。 ネーベルと呼ばれた少女は咳き込みながらブラウを見つめていた。 「遅かったですね、ブラウ。貴方は約束を違えました。私は云いましたね?ヴィントの監視を任せる、と。どんな事でも全てを話しなさい、と。…ですが、貴方は全てを話す事をしなかった。私に気付かれなければいいと思ってたんですか?」 冷たい声でクヴェレが言う。 ブラウは焦りながらも言葉を紡いでいく。 「上官!…た、確かに俺、破りました……!どんな罰でも受けます!だから…ネーベルだけは…!!」 「貴方を失う訳にはいかない事を判っているでしょう?…大丈夫、苦しまずに逝かせて差し上げますから」 「…助け、て……お兄ちゃん……」 ネーベルは涙を浮かべてブラウを呼ぶ。 ブラウはネーベルに近づこうとするが見張り役の所為で近づけない。 「ネーベル!上官、やめてください!!」 「さようなら、ネーベル」 「ネーベル!!!」 ブラウの悲痛な叫びは空しく。 ネーベルの心臓めがけて剣が突き刺さり、ネーベルは意識を手放した。 「…ネー、ベル…」 放心状態のブラウは見張り役が離れたため、ネーベルへふらふらと近づく。 「…ブラウ、是で判りましたね?私との約束を守らなければ、どうなるかを…」 「…ネーベル…」 「……御機嫌よう、ブラウ」 今は何を言っても無駄か、とクヴェレは想いその場を後にした。 独り、残されたブラウはネーベルの亡骸を抱いて涙を流した。 「…ネーベル……ごめん…ごめんな……!ネーベル…!!」 まだ温かい、生きているかのようなその温もりが涙を止めさせなかった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加