13 大切な人

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 伊波はうなずいた。 「誤解のないように言っておくが、ルネの父親は、他の村人のように、ディシオンに対して差別的な考えを持っていたわけじゃない。むしろその逆で──ディシオンのことを、奴隷か家畜程度にしか思っていない村人が多い中、ルネの父親は、ジュストにきちんと教育も受けさせ、ルネとは実の兄弟のように扱っていた。だが……」  そこで、伊波はちょっと言いにくそうに言葉を切った。 「成長するにつれて、ジュストは、ルネに想いを寄せるようになっていった。それでルネの父親は、何か間違いが起こらないうちにと、ジュストをルネから引き離したんだ。ルネは、子供の頃からリュカと婚約していたし……もしそうでなかったとしても、その時代では、ディシオンとソーリアが結ばれるなんていうことはあり得なかった。
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