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日を追って、母が眠り続ける時間が増えた。
今ではとうとうナースステーションに一番近い部屋。
外は人の出入りが多い。
けれど、病室内は静かだ。
父から言付かった本を携えて慎一郎は病室にいた。
父さんは母さんの看病しつつ、研究や読書は欠かさない。
仕事をするって、どういうことだろう。
気分の切り替えができるのかな、学校だって忙しいはずだし、自分の家にも帰っているのだし――。
父さんにはかなわないや。
分厚い専門書や洋書を見て、彼は思った。
僕も、父さんのようになれるだろうか。
公私共に引き受けられる男に?
ほんの数年前、図らずも見てしまった両親の、交歓を思い出す。
女のスカートの下や下着の中がどうなっているのかとか、自分の身体が変わって熱を持つのを自覚していたから、正直驚いた。自分の持ち物は何の為にあるのかを一瞬で悟った。
あの時、見えたものは何だったんだろう。
みだらだ、とは思わなかった。きっと、僕が知らない世界なんだ。
僕はまだだけど、クラスでは、女と寝たと公言するやつもいる。奴らだって知りっこない。
だって、ふたりは嬉しそうだったけれど、泣いているようにも見えた。
何故、好き合っているふたりが、辛そうに見えたんだろう。
僕も、大人になったらわかるのかな。
ふと、見上げると、入り口に人影。
やっと来た。父さんだ。
慎一郎はノックの音を聞く前にドアを開け、父を迎え入れた。
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