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「やりましたね、部長!」
黒田さん達を送り出した店先で、沢部が待っていましたとばかりに声を上げる。
今年入社したばかりの沢部にとって、
あまり大きくもないうちの会社があの有名店くろべぇのネット販売権を獲得したなんて、恐らく尋常じゃない程の興奮だろう。
入社して二十年近く経つ四十歳の俺ですら、興奮しまくって身体中が熱いんだから。
「ああ、やったな沢部!」
お互い顔を見合わせ、この商談が成立した事実が夢ではない事を確認する。
「伊崎部長を始めチームの皆さんのお力です」
そう言って微笑む顔は、爽やかで紳士的。
艶やかな黒髪の下で細められている目は微かにつり上っており、スッと通った鼻筋に薄い大きめの唇はニコリと微笑んでいる。
物腰も緩やかな沢部遼は、おっさんの俺から見ても男前そのものだ。
身長だって俺より十センチほど高いが、その足の長さなんてもう正に今時の若者だろう。
腰の位置が非常におかしい。
「?どうしたんですか、部長?」
不思議そうに顔を傾げられ、俺は慌てて首を横に振る。
「いや、お前の力もあってこそだよ沢部。黒田さんも言ってたろ?」
そう返すと、はにかむように照れた顔を見せながら、「いえ、俺は」と小さく謙遜してみせる。
そんな姿すらハンサムだってんだからもう、こいつには本当に敵わない。
いや。
別に容姿で勝負してる訳じゃねぇぞ?
…………
俺だってあと、二十年ほど若けりゃ……
ああ、腰の位置は変わらんがな。
はぁ。
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