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Neurose
「あのドアは入口のドア。一方通行だよ。もう一つ、出口のドアがある。それを探さないとここからは出られない。」
金髪の男の人が言った。
「じゃあ出口のドアはどこにあるの?」
「それは自分で探さないとダメ。」
「こんなに走ったのに…他にドアなんて無かったよ?」
金髪の男の人の肩に何かのぬいぐるみの顔だけが乗っかっている。
パーカーのフードのようにも着ぐるみのようにも見える。
はっとした。
この人、シュウ達と一緒にお酒飲んでる映像の中にいた!!
「私のこと知ってるんでしょ?」
「もちろん、知っているよ。君は新しいキョウカ。」
「新しい…」
そっか私は新しいキョウカなんだ。
「何かヒントくれない?」
その人はきょとんとして私を見つめる。
まるで少年のような眼差し。
「ふふっ、いいよ。」
顎に触れ考えるような顔をした。
長い睫毛に覆われた瞳が見開かれて私に歩み寄る。
「過度のストレスと過労ですね。最近、精神的なダメージなど無かったですか?」
駆けつけた前マネージャーの林はカインの顔を見て頷く。
「私とこの人がマネージャーの交代をした事がショックだったのかもしれません。それとお父様の大きな病気も発覚して…、精神的に疲れきっていたのかもしれないです。スキャンダル記事が掲載されたりもありましたし…」
医師の話を真面目に受け答える林を残し、カインは病室で眠るキョウカの元へ。
長い睫毛に覆われた瞳は時折ビクビクと動くが、開かれる事はない。
額にかかる髪の毛を避け、額に人差し指を添える。
何も見えない事を不審に思い、キョウカの首から下がるペンダントを外す。
改めて人差し指を額に添えると目を閉じた。
「っ!…ウヴァル?コカか…」
人差し指を戻すとキョウカの顔を見つめた。
「キョウカ…、戻って来い…。」
キョウカの手を握り、何度も名前を呟く。
病室のドアが開き林が入って来た。
「司は暫く休養させましょう。いろんな心労が重なって…辛かったんだと思う。カイン、事務所に帰って司の仕事の調整してくれる?私がそばについてるから…」
「…貴女が…してくれますか?」
カインの瞳は光を宿し、林を見つめた。
林はビクッと身体を硬直させ、病室から出て行った。
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