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「20年前のキョウカに会ったよ…。」
「っ!」
「えっ?どういう事?どうやって?」
シュウがベッドに手をつき身を乗り出す。
「私…あのキョウカにはならないよ。だから…二人とは…、もう関わりたくない。」
「キョウカ…」
シュウが目を伏せた。
「俺は20年前のキョウカではなく、お前を愛すと言った筈だ。」
カインの目が見れず俯いて目を閉じた。
「カイン、魂…本当は契約してないんでしょ?それなのに…パパを助けてくれてありがとう。でも、私…カインの気持ちには答えられない。」
「キョウカ、俺は…」
「ごめんなさい。私、やっぱり春井さんが好き…。」
カインが握っていた私の手をそっと…離した。
今までカインに握られていた手はどんどん冷たくなっていく。
自分の手を自分で握りしめ、もう一度呟いた。
「ごめんなさい…。」
「わかった。なら、俺はお前の前から消えよう。」
「カインっ!」
シュウがカインの腕を掴む。
「シュウ、これ以上この人間に関わるな。行くぞ。」
この人間…。
今カインが言った。
私の事を…この人間って。
胸がぎゅっと締め付けられて、まだ顔を上げられない。
「…わかった。さよならキョウカ…」
シュウの言葉に顔を上げた時には二人の姿は消えていた。
病室が静寂に包まれて、寂しさと悲しみが一気に押し寄せて来た。
「大丈夫…、大丈夫…。」
カインとシュウが去ってから、まったく眠れなかった。
朝日が昇るのを窓の外を眺めながら待った。
段々と明るくなっていく空を眺めていると、寂しさも悲しみも薄らいでいくように感じた。
どれくらい外を眺めていたんだろう…。
部屋のドアをノックされて振り返ると真っ白な白衣を着た看護師が入って来た。
その真っ白な白衣が目に眩しかった。
「九条さん、早いのね。気分はどうかな?…九条さん?」
ポロポロと勝手に溢れ出た涙に看護師が驚く。
この涙はなんだろう。
そんなに白衣が眩しかったのかな…。
「大丈夫、何も心配する事はないからね。」
看護師に背中をさすられ、横になるよう促される。
「朝食持って来るまでもう少し寝てね。何も考えないように…って無理かもしれないけど…」
看護師の声に目を閉じた。
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