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会場がゆっくりと暗くなっていく。
広がる闇、しかし今度ばかりは暗闇は僕を包み込んでくれそうにない。このまま全てを覆い隠してくれればいいのに。
会場がすっかり暗くなった。
僕はこのまま、この闇の中、逃げ出したいと感じていた。そんな僕を糾弾するかのようにスクリーンが白光を灯す。
蛍光灯の明かりと違って、映写機の光は淡いはずだ。しかし僕にはスクリーンを照らす光が酷く明るく、そして目に痛いほど白く映った。
四角いスクリーンの中で、幼い頃の優子が笑っている。 先に新婦、そしてその後に新郎の生い立ちが流れるらしい。
僕の喉は再び、引き攣るほどに渇いていた。
耳も遠くなり、鼻もきかなくなる。
しかし視界だけは霞むことなく開けていた。
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