change a past of mine --------->

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美しい生身の女性だ。 となれば、これにだって必ず理由がある。 差し当たって思い当たったのは、同じく代行業者である健一が僕が新郎役であることを知り、優子へ情報提供したのではないかということだ。おそらくその線が濃厚だろう。そう思ってしまえば、どうってことはなかった。 むしろ僕は、楽しくなってきた。 生い立ちビデオに流れるエピソードの数々が、忘れていた僕の思い出を次々に浮かび上がらせてくれるのだ。僕の頭の中で流れる映像とところどころリンクしながら、生い立ちビデオが流れていく。 スクリーンに浮かぶ、修学旅行や陸上大会などの大きなイベントの写真。友人の家でだらだらとテレビゲームに興じる日常の一コマを捉えた写真、そこで生まれたたわいもない笑い話。それらが呼び水となって、僕は昔のことをどんどん思い出していった。 女の子に始めて告白した思い出、あれは確か中学生一年生の頃だったはずだ。たしか罰ゲームで思いを寄せた相手に告白することになり、見事に玉砕したのだった。 それから始めてお付き合いした女の子のこと、二番目にお付き合いした女の子のこと。真っ先にこんなことばかりを思い出すのは、僕が健全な成人男性である証だろう。 一人目は三ヵ月でふられてしまったのだった。二人目はそれなりに長く付き合うことができ、中学を卒業するまで上手くいっていたのを覚えている。 そういえば、彼女とはどうして別れてしまったんだっけ? はっきりとは思い出せないけれど、推測するならば僕が地元を離れたからだろう。静岡と京都、携帯電話も満足に普及していなかったあの頃、これほどの遠距離を高校生が埋めることは難しかったはずだ。 そうして高校へ進んだ僕は、それから比較的多くの女の子と付き合った。膝を壊してしまった僕は時間を持て余していたのだ。 東京へ進んでからも同じだった。今振り返れば、代わり映えのない毎日だ。あの頃は女の子と仲良くなることが全てだったように思える。 それらを経て名古屋で就職した僕は、いつしか女の子と仲良くなりたいという活力すら失っていて、さらに代わり映えの、いやここに来て本当に代わり映えのない日々を送り始めたのだった。このCAPサポートでのアルバイトをはじめるまで、僕には思い出せるようなエピソードがほとんどなかった。
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