『白鬼』

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 はらはら落ちる楓の葉が水面に落ちて沈んでいく。  白上神社には、水鏡に封じられたとする『白様』が祀られている。  その神社の裏手には池の畔に楓がある。そこへは決して近づいてはならない。  その美しさに魅せられてしまえば、帰れなくなる。何故なら…… 「だって、忌々しい白鬼さえ居なければ、私が食べてしまうのだから」  楓の上に繋がった、美しすぎる赤鬼に喰われてしまうのだから。 「さて、白鬼に仕返しするには、私はどうすべきかしら」  凄絶な笑みが赤鬼から溢れる。 「この鎖を断つには、私はどうすべきかしら」  彼岸の花よりも真っ赤な菊が、風に乗って山吹色の少女の前に落ちていった。
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