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「待ちなさいっ!!」
あぁやってしまったと、思った。
左手のひりつく熱と、込み上げてくる涙を押し込めて走る。赤い膝丈のワンピースが足に絡みついて躓きそうになる。
(私が悪いって言うの!?)
先に手を出してきたのは、相手なのに。
未だに熱を持っている左手をきつく握る。痛みとやるせなさに視界が潤む。
「こんな国だいっきらいっ!!」
叫んだ声にぎょっとして回りの大人たちがこちらを見る。見て欲しくない。こんなに異質だとわかってしまう。
目をギュッと閉じて踏み込む足に力をいれる。
(嫌いだ嫌いだ嫌いだ)
皆皆同じの黒眼黒髪。和装に身を包み、肌は暖色の白。
だと言うのに、私はっ………!!
「きゃっ」
突然裾を引っ張られて体制を崩した。
わさっ。
「………え?」
来ると思っていたものと違う感触が全身を包む。顔をあげると、頭の上からハラリと紅葉した葉が落ちてくる。
「何処よ、ここ」
無我夢中に走っていたからか、と考えたが、いくらなんでもそんなはずはない。そこはさっきまで駆け抜けていた町中ではなかった。人の気配もなければ、道らしきものもない。
裾が引っ張られたのは、どうやら枝が引っ掛かったからみたいだ。
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