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「……驚いた、本当に詳しいんだね」
袖を振るのをやめてその人は少女の顔を覗き込む。その時はじめてその人の瞳が、赤いことに気がついた。
「家が呉服屋なのよ、私は養子だけど着物はよく見るわ」
着物は嫌いじゃない。
でも、どんなにセンスよく反物を選んでも客は納得しない。
「私、山吹色の髪に目も萌木色でしょ?こんな見た目だから私が居るとお客さん逃げてっちゃうの」
今、私は綺麗に笑えているかしら。
「だから、異人は異人らしく異人の服を着ることにしたの。この服、私が施設に預けられたときに着ていたものを真似てみたの」
大丈夫。笑えている。
「そうしたら私がどこに居るかわかるから、居ないときにでも来るでしょう?」
左手にはまだ熱を覚えている。
「なのにあいつらわざと来て私だけじゃなく、お婆さんとお爺さんも貶したんだ」
挙げ句にお婆さんを突き飛ばした。
だから、あの客に向かって平手打ちをしたつもりだった、のに。
「結局、私がしたことはお爺さんを怒りに任せて叩いただけだったわ」
「………へぇー」
白い人は視線を逸らさず首をかしげた。その顔を見て、はじめて余分なことを話していたことに気がついた。
「ごめんなさい、あなたに話してもしょうがないことだったわね」
立ち上がってスカートの裾を払う。
積もった赤い葉がはらはらと落ちていく。それを視線で追いながら、ふと微笑んだ。
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