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「嫁入り前の娘が……もう少し慎みを持つとかさぁ~」
「……?あ、女同士とはいえ、勝手に胸に触れるのは失礼だったわね」
心なしか、鬼の体温が上がっている気がする。
本当に風邪かしら。
首をかしげていると、鬼が二度目のため息をついた。
「……気づけよ」
「何を、よ」
「僕、こんな成りだけど、男鬼なんだけど」
「だからなんだって言…うの、よ」
………え?
「……女物の着物よね」
「僕、鬼の力強いから異性の着物を着て押さえてるんだよ」
「簪も差してたわよね、綺麗に結い上げて」
「髪が乱れないよう簪を差すって言うのも立派な力封じの類いのものだよ」
「………」
「………」
次の瞬間、見事な平手打ちが決まった。
まりあは慌て後ずさると、両手で顔をおおう。
「騙されたっ!!」
「普通気づくよねっ!?明らかに気がつくポイントたくさんあったよねっ!?」
「この国の人間はそういうものだとっ!!」
ひとしきり叫ぶと、両手の隙間から鬼を窺い見る。
先程な強烈な気配はすっかり抜け落ちて、情けなくしゃがみこんでいる姿はなかなか可愛い。
「これが、鬼」
そろそろと白雪のような髪に手を伸ばす。
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