温度

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「ん?何だよ。お前お天気お姉さん好きなの?」 「澤ちゃんだろ、好きなのは。」 「は?何でそうなるんだよ。」 「天気読む女の人でいいじゃん。お天気お姉さんってなんか。」 お天気お姉さんって普通だろ。お昼御飯は昼飯だろ、夜御飯は夜飯だろ、お天気お姉さんは…やっぱお天気お姉さんだよな。 「何だよ。」 「何かやらしい。」 やらしい?何が?何で?何処が?どんな風に? やらしいってどういう意味だろ。もしかして嫉妬?嫉妬してんの? 嫉妬はないだろうな、だって俺お前しか見てないし、それはお前にちゃんと伝わってるはずだし。 「お前頭窓の角にでもぶつけたか。」 「ぶつけてないし、窓の角は全部澤ちゃんが…あ。」 「そうだぞ。お前のためにこの部屋どんだけ改造したと思ってんだ。」 「そうだね。」 「角という角を俺の器用なDIY能力で予算1万円以内だ。」 「意外とかかってない?」 「お年玉貯金からだ、心配すんな。」 俺の貯金は、今の岸の為と岸の将来の為に使いたいと思っている。 「母ちゃんがさ、お礼したいって言ってるのに、何で断るの?」 「別にそんなのいらないし。お礼して欲しくてやってるわけじゃないし。」 俺のしたいことは、岸のしてほしいことで、岸のお願いしたことで、俺の欲求は岸の気持ち一つで決まってくる。 「そうなんだ。」 「そうだよ。」 岸、お前はちゃんと俺に聞きたいことを聞いているのか。 お前はちゃんと俺にしてほしいことを言ってくれているのか。 言葉で伝え合うのは難しいかもしれないが、俺にはそれしかない。 お前の要求全てを、俺は支配して、俺で全部染めたいんだよ。 「ちょっとだけ、触ってもいいか。」 不意に俺は岸にどうしても触りたくなった。 いや、違うな。不意ではない。いつも思っている。ずっとお前に触って痛いんだよ。 「もう触ってるじゃん。」 ほらな、もう気付かれてるし。 「いや、手はいつも触ってるからさ。」 「顔だって、背中だって、足だっていつも触ってるじゃん。」 そこまでは、今はやってないだろ。もしかしてこれは、俺を誘ってんのか。
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