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(そんなの、解ってるさ! いい奴だから、好きで好きで、振り向かせたんだ!)
俺が悪い!
俺が悪い!
俺が間違っていた!
だから、今度は絶対、浮気しない!
結婚して、幸せにする!!
酒が、胸の奥底に埋めていた後悔を引き摺り出したに違いない。気が付いたら、課長に告白していたのだ。
(あぁ、まずい! 先走りもいいところだ)
「なぁ、香城。この間の、アレ。……本気?」
後悔に耽る香城の耳に届いたのは、遠慮がちな渡辺の声だった。ぼそっと、渡辺が訊いてくるまでに缶コーヒーを半分まで飲む、たっぷりの時間を費やしていた。
「えっ、……そ、それは」
折角、美香との話に摺りかえられているんだ、日本じゃ完全マイノリティーの性癖をカミングアウトする必要があるのか、と香城は躊躇った。
(いや、俺はいい。ゲイだと知られても、別に構わない。でも、課長に迷惑が掛かるのは火を見るより明らかだ)
それに、……。
課長を攻略するまでは、周りにチャチを入れられたくない。ただでさえ、手強い高嶺の華だ。それに「世間体」からの干渉が入ったら、堕ちるものも堕ちないじゃないか。そんな計算くらい、香城にだってできる。
「いや、違いますよ。美香さんとも課長とも関係ないです、ただの酔っ払いの戯言です」
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