第2章

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 だが、日本が暮らしやすい環境でないと、帰国後数日で身に沁みた。ゲイは、就職も難しい。 (それに、この暑さが不快だ。ベタベタ・ジトジト、まとわり付く湿気に嫌気がさす)  でも、……。  香城は、緊張している振りで、時折、目の前に座っている男を盗み見ていた。  3人の面接官のうち人事部・岩井課長と営業部・相田部長は、香城がゲイだと申告した途端、別室協議と言ってこの場を離れている。  ひとり、営業部の大江課長だけが別室協議の参加を拒否して、香城と一緒の空間にいる事に甘んじている。  残っているからといって、何かしらの質問をするわけでもなく、別段、香城に興味もなさそうだ。持ち込んだパソコンをパチパチ叩いている。そういえば、面接中も作り笑顔、一つ見た覚えがない。それに、香城の口から「ゲイ」の言葉が飛び出た時さえ、些かの驚きは否めないにしても、表情を崩す事がなかった。  だが、香城の方は、初めから大江に興味がありまくりだ。面接室のドアを開けた途端に、引き付けられた。まばゆい光輪が、香城を急襲したのだ。  Er ist geil!! (わぉ、カッコイイ!!)  声こそ出さなかったが、唇は言葉の形を作り出していた。よもやの事態だ、面接官がこんなに美人だなんて!  顔立ちは端正だ。品がある。長身も186cmの香城と、ほぼ同じ位だ。     
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