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「あっ! ご、ごめん」
「どうしたの?」
「いや、あのね、晶の後ろに座ってた男の人なんだけど...」
私の後ろの席に座ってた男の人。
ちょうど私とは背中合わせの状態で、依代ちゃんからはその人の後ろ姿しか見えない。
「帰ろうとして立ち上がったから、横顔が見えたんだけど、その顔がねっ! すっごい美形だったのよ!」
依代ちゃんは少し興奮気味に言って、また視線を私の後ろ、その人の方へ向けた。
「え? そうなの?」
私はそう言ってから、自分の後ろを振り返ったのだけど、私の視界に入ったのは、スーツを着た背の高い男の人の後ろ姿。
私からは全くと言っていいほどに顔は見えなくて、その人はそのまま店の出口に向かっていく。
「顔、見えなかったわ。残念」
苦笑いしながら、私は依代ちゃんの方に視線を戻した。
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