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私は悔しくて、
ーーーバカにしないでよっ!
と、叫びたかった。
だけど我慢した。
逸らした目をまた須賀 真白に向ける。
そしてゆっくりと微笑む。
この笑顔は、多分、強張っているんだろうなって、自分でもわかっていたけど。
負けたくなかった。
見ず知らずの、仕事で少しだけ会った男に憐れまれたり、バカにされたくなくて。
強い自分でいたいと思う私は、微笑みを崩さずに言う。
「広報課は3階にございます。如月が間もなく、こちらに参ります。それまで暫くお待ちください」
私の声。もう擦れていなかった。
そして指先もーーー震えが止まっていた。
強がるけど、強がってみせるけど
私の胸の奥の瘡蓋(かさぶた)は、完全に剥がれてーーードクドクと血が流れている。
流れる血が迸ると痛みなんて、もうわからない。
それは痛すぎて、痛みがわからなくなるほど、
心が麻痺してしまっているんだってーーーそう思った。
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