第1章

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暮れなずむ夏の日 暑い空気がほんの少し和らいで、迫り来る夕闇が、キラキラと光るイルミネーションを眩しくする時間。 「もう、そろそろ帰ろうか?」 一日中、はしゃいだ5才児の姫は、まだまだ体力が有り余っているようで、 「え~。まだ乗りたいのが有るもん!」 と、上下に揺れながら、くるくる回る飛行機型の乗り物を指差した。 普段、構ってやれない姫の申し出を無下にもできず、やれやれ……と思いながら 「これで最後な。あんまり遅くなるとママが心配するから」 少し剥れながらも「ハイハイ」と。 少し大人びたように澄ました二度返事をする姫の小さな手が、僕を引っ張っていく。 二人乗りの小さな空間。 安全ベルトもない飛行機に、縦に並んで乗り込むと、姫を後ろから抱き締めるように包んだ。 「んもぉ~パパ!大丈夫だよ。まだお空に飛んでないんだし」 少し、鬱陶しそうに顔をしかめて僕を見るかわいい姫に、危ないから前向いてて、と柔らかく笑う。 ふわりと舞い上がった飛行機は、ゆっくりと回りながら徐々に加速し上下に揺れ出す。 生意気リップの姫は、僕の存在など何処かへ飛んでしまったかのように、楽しい声をあげる。 まるで、10年前の君のように……
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