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「パパぁ、もう終わったよ~。お手て放して!」
姫の声に、ふと、抱き締めていた手を緩める。
先に降りた僕は、まだ少し遠い記憶の中に居るようで、苦笑しながら乗り物から姫を出そうと手を伸ばした。
小さな手が、僕の手を掴んだ時
「ありがとね……」
懐かしい声が、夜風と共に耳元を掠める
君は、幸せに暮らしている?
君は、もう泣いていない?
君は……
思わず姫を抱き上げ、顔を見られないように抱き締めた
「パパ、苦しいっ!」
無邪気な姫の声に、温かい涙が頬をつたう。
「さぁ~帰ろっか。ママが待ってる」
きっと、幸せに暮らしている
温かい涙を流して笑っている
「愛してたよ……」
あの時、言えなかった言葉
漆黒の空に溶けるように、呟いた叶わぬ思い。
君に届けと……
Fin.
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