1人が本棚に入れています
本棚に追加
「フミツキ様、お腹はこなれましたか?」
「えっと、まだ少し張ってる……かな」
「お食事は多すぎましたか?」
「あ、いえ、僕が勝手に食べ過ぎただけですから。けどちょっと多かったかな?」
「畏まりました。次回からは調整いたします」
「ありがとうございます」
「それではもう少ししたらタルドレム王子がお見えになりますのでご準備をいたしましょうか」
「タルドレム王子って?……あ……え゛ぇー?」
緑髪の王子の顔と、そして自分との関係を思い出し露骨に嫌そうな顔になる文月。
「あらフミツキ様、綺麗なお顔がもったいないですよ」
リグロルがやんわりとたしなめるが文月の不機嫌は直らない。
「来てもらっても何を話していいか分からないですよ」
「お気にする必要はありませんよ。話題なんて男性から提供するものです」
「いや、そうじゃなくて」
「何かお気になることでもございますか?」
「ほら、なんだかよく分からないけど婚約者って事になってるんでしょ?それがなぁ……なんだかなぁ……」
「意識してしまわれますか?」
「僕は意識なんてしたくないけど、向こうはそう思っているんですよね?」
「それは勿論です。婚約者のお話は何度もニムテク様とされておられたご様子でしたから」
「あー、ですよねぇ……相手が僕をそう見てると考えると……」
リグロルがくすりと笑う。
「お年頃ですね」
「違います」
うふふとリグロルが笑い文月に両手を差し出す。文月はふてくされながらもリグロルの手を握り返した。大人しくリグロルに支えられながら文月は歩く。
リグロルが文月をつれてきたのは部屋の一角だった。日本で言えば屏風で目隠しされた場所である。壁際には大きな鏡や豪華な化粧台が並んでいた。
隣の衣装部屋にも続いており衣装部屋には扉が無いのでずらりと奥まで並んでいるドレス等が文月の位置からでも見えた。
「フミツキ様のお好みの色などございますか?」
「青系が好きです、けど……」
「それなりの点数はございますよ。ご希望されればここにあるもの以外の新着もご用意できますが」
「いえ、その、えっと王子のために着飾るんですよね?」
「ええ、そういたしましょう」
「その……嫌われたいってわけじゃないんですけど、あまり好意はもたれたくないなぁ……なんてちょっと思ったりして」
「あら」
「すみません……」
最初のコメントを投稿しよう!