第1章

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 視界の左下に黒いメールマークが点滅した。  今の授業がホームルームの為授業に集中せずにぼんやりと窓の外を眺めていたジョースケは、一瞬眉をひそめて視点を黒いメールマークに合わせた。  途端視界の左側に半透明な水色のメールボックスが出現した。  メールの送信元を確認すると、そこには『From佐藤 博史』との記入があった。  なんだあいつか。  ジョースケが廊下側のヒロシの席を見ると、茶髪のイケメンが暇そうにこっちの席を見ていた。  ジョースケはヒロシには反応せず目線を戻し、内容を開かずにメールボックスを閉じた。  ヒロシの事だからどうせ授業の暇つぶしだろうとジョースケは判断し、無視する事にした。  ちなみにメールマークもメールボックスもそこに存在するわけではない。  タカシの首の後ろに装着された【イマジナー】が、脳内で視覚情報化しているのである。  イマジナーはこの超情報化時代に、必要不可欠なものになっている。  メールや電話の機能はもちろん、財布など日常生活に必要な機能がこの一台に詰まっているのである。  そしてイマジナーの目玉機能は【ダイブ】。  インターネットに精神を投影して擬似的にインターネット内に入る事ができるのだ。  こんな便利グッズが復旧しないわけなく、今や全世界の人間の90%以上がイマジナーを所持しているらしい。  まあそんな事は普通の高校生であるジョースケには関係のない事だ。  授業中にダイブするのは校則違反だと、先週配布された電子生徒手帳に書かれていた。  ということで今ダイブして暇つぶしする事はできない。  授業を聞く気にもならない。  黒板の前では初老の男性、担任の田中先生が校則について永遠と語っているのである。  現在は4時間目、太陽はギラギラと照っていて心地よい春風が吹き抜ける。  よし、寝よう。    高校生活が始まって3週間、この授業の必要性を感じる事の出来なかったジョースケは大胆にも寝ることを決意した。
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