サナギ倶楽部

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「新手の宗教か詐欺?」 だがヤケ酒の酔いも手伝って昨夜、予約メールを送ってしまった。騙し取られようにも金がない。 高級クラブ時代さながらに黒を基調とした重厚感溢れる店内。わずかな間接照明のみで仄暗い。 「わたくし、支配人の蝶野翔子(ちょうの しょうこ)と申します」 まるでパリコレのモデルのような黒いドレス姿の女性が応接テーブルの上でうやうやしく名刺を差し出した。 「精神科医・医学博士…?」 意外な肩書きに、真田は首を傾げる。 「ここはアメリカの医療研究機関で極秘に開発中のカウンセリング法を実施する支所です。 社会では引きこもりや不登校を問題視いたしますが、ストレスの多い現代社会では無理からぬこと。虫が成虫になる時のように、人の成長にも『サナギ』の時期が必要なのです。 外部からのストレスから遮断され、自分自身を見つめ直す『サナギ』の時期を経て自ら殻を破ることで再び人は成長するというのがわたくしどもの理論です」 「…はあ…」 難しいことはよくわからない。 「百聞は一見に如かず。ご案内いたします」 真田は金文字で「サナギルーム」と書かれた部屋に通された。
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