サナギ倶楽部

6/6

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
真田は部屋名のない個室に案内された。真っ暗な部屋に羽化寸前の蛹が一つ。中には真田からも「老人」と呼べる男の姿。 見覚えが…ある? 「伊達…君!?」 「伊達様は、当倶楽部の一番のリピーター様でした。そのこと自体は問題ではありません。ストレス社会ですから」 「伊達君にも何か不幸が?」 伊達も無事再就職し、数年間は時々会って励まし合っていた。やがて彼はヘッドハンティングされ海外を駆け回るようになり、いつしか連絡が途絶えた。 「いいえ。この方は20年前からこのままです。『人生をやり直す』と言っても、ご本人様が全く生きる意思を失った場合、羽化が難しいようで」 ちょうど俺が立ち直った歳じゃないか。一体どうして…… 半透明の膜の中で老いた伊達が昔と同じ笑みを浮かべた。夢の中では若く前途洋々のままなのだろう。 「ところで真田様。ご利用、どうなさいますか?」 ~終~
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加