第一章 流々へ

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 カウントがゼロになった。 機器の値を確認すると、 瀬戸内から戻ってきた携帯電話が、 和弥の手元で鳴った気がした。  映像の中、 天羽の乗った小型宇宙船は光に包まれていた。 「熱量、最大値計測」  小型宇宙船が光の中で、影を無くし、 やがて消えていった。 「金属反応なし」  空間に存在する物が、 全てゼロになった。  テレビの画像も、 光に包まれた後、ノイズのみになった。 そして、慌てたようにCMが流れ出した。 テレビ局に問い合わせの電話が殺到していると、 テロップが流れたが、 何も無かったかのように他の番組が始まった。 「ゼロの値のみか……」  妙に静かに感じる世界には、 熱が消え去るとほぼ全てがゼロの世界になった。
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