第一章 流々へ

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 呟きに答える声は無い。 ゆらぎのように値は、 スクリーンを移動してゆく。 安定するまで空間にうまく留まれないのかもしれない。 やがて、 肉眼でも確認できる金属の塊が浮かびだした。 「固定」  固形物が出現すると、ゆらぎは納まり、 スクリーンの激しい移動も収まってくる。  和弥は、 手元に操作用のキーボードを持ってくると、 一部の機材の移動を開始した。 値の測定に、 定置計測と、移動計測の両方を用意していた。 移動するものは、 計算上、影響を出さない範囲でギリギリまで物体に近寄る。  値が全ての世界でも、 目で確認する衝撃は今も昔も変わらない。 無の世界から、 宇宙船が浮かび上がってくる様子は、 言葉にならない不思議な現象に見えた。
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