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「和弥」
東雲は、
和弥の座る椅子の近くまで走ってきていた。
和弥も囲まれていたスクリーンを、
天井に戻した。
「分かっている」
和弥は、
携帯電話を抱きしめるようにうずくまった。
「流々、
宇宙空間は暗いのかもしれない。
流々、
俺も、何度も思う。
暗い宇宙から人間の住む地上に着くと嬉しいよ。
凄く嬉しくて、
もう何処にも行きたくないと思う事もあった」
でも、再び宇宙空間に出てしまうのだ。
「和弥、
流々、寒くて、眠い」
生命反応は動かなかった、
皆、流々と同じ暗闇に居るのかもしれない。
「俺の故郷に行こう、流々。
自転車で、
草原を越えよう」
「うん」
流々の声が、
ノイズに消されてゆく。
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