第二章 別れは,はじまりのために

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 奈々子は、 郷土料理を幾つも作り、 テーブルに並べて待っていた。 和弥と、東雲が席に着くと、 正面にはウエディングドレスを着た流々の巨大な写真が貼られていた。 モデルのバイトの時に撮ったものだろうが、 眩しいばかりの流々の笑顔が、 和弥と東雲の表情を消していた。 少しでも、 顔を動かしたら、 そのまま泣いてしまうそうだった。 「後ろも見て」  奈々子は、 ほのかな笑顔を浮かべていた。 和弥が後ろを向くと、 和弥のドレス姿もあった、 しかも東雲のエスコート付きだった。 和弥が、 流々の声を聞いて、 微笑んだ瞬間のものだった。 「流々が、凄く気に入っていてね。 その写真、 自分の結婚式には、 そんなドレスでエスコートして貰うんだって、 貼ったのよ」  別の意味で、 和弥と東雲が固まった。 ウエディングドレスの和弥は、 和弥だとは分からない位に綺麗だったが、 男としては、 褒められるのは悲しい。
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