第二章 別れは,はじまりのために

13/20

80人が本棚に入れています
本棚に追加
/330ページ
 融合により、生命の無い惑星に、 生命が誕生するのかもしれない。 けれどもそれでは、 流々は惑星に融合してしまう。 東雲の出す計算はいつも、正確だった。 「分かっている」  和弥は、 自分のキーボードを取り出すと、 データの値を表示した。 出現した時の詳細なデータをベースに、 様々なその後のデータを追加していた。 出現の際のゆらぎが、 今回の焦点だった。 ゆらぎを捉え、ゆらぎを誘導する。 「出現箇所はゼロでは無く、不足分がある空間だ」  二度の衝突により、 生命体に変質が加わってしまっている。 和弥は、 東雲に有り得ない奇跡を起こす計算式を求めた。 出現箇所には、人間を構成できるだけの物質がある、 そこに魂を持って来いといった要求だった。 「不可能ではないよ」  東雲は、頷くと計算式を導き出した。 「しかし、魂というものの理論が分からん」  東雲の苦悩に、和弥は詳細なデータを弾き出していた。 「可能性は、水分にある」  始めに心臓が出現したと思った和弥だったが、 値を調べてみると、 始めに水分が出現していた。 水分の成分は、海水に近く、人は海から出来てゆく。 「不足のない状態ならば、十分に出現可能だろう?」  問題は、記憶。 そして、人間というものが正常に稼動できるか?  後者は計算で算出できても、心と記憶の計算は難しい。
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

80人が本棚に入れています
本棚に追加