第二章 別れは,はじまりのために

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 異なる分野に進み、 違う研究をしてきたが、 和弥と東雲はずっと一緒に活動してきた仲間のように息が合っていた。 文句の言い合いなど、 ある意味、長年連れ添った夫婦の域に入っていた。 人間関係は希薄な東雲だが、 和弥を抱いている事により、 和弥を誰よりも信頼し、命よりも大切なものがあると知った。  人には、 愛というものが無ければいけない。 計測できない思いがある。  機械の中には、カプスから持ってきた異様な植物も混じっていた。 地面を歩いて近寄り、 植物が東雲の顔を葉で撫ぜていた。 東雲が、驚かずに握手を求めると、 植物が喜びのダンスを踊り始めた。 「そうそう、今回使う物質はカプスから集めた」  和弥は、 箱に詰め込まれた、 これから人間になるものを東雲に見せた。 それは、 一見すると土にしか見えなかった。 さらさと茶色い粉上の物質だった。 和弥は、 物質の特性を記載した紙を、 東雲に渡した。 「妙な物質をよく手に入れたものだ……」  カプスとは最初に辿り着いた星かもしれないが、 決して手抜きでは無い。 理想の物質を探し求めていたら、 結局、最初のカプスに辿り付いたのだ。 和弥にとっても、 三年は長いようでとても短い期間だった。 「行くか」
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