第二章 別れは,はじまりのために

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 それは、 瀬戸内の指摘の通りだった。 故に苦しみ、そしてもがいた。 今も、 力も権力もないが、 結果だけは出し続けている。 「今回は、全てウチの職員が、 君達の理論に基づいて行動します。 君達は、見ていてください。 そして、分かってください。 君達の残した常識がどんなものか」  瀬戸内の言葉は重い。  和弥と東雲は、 用意された部屋の巨大なスクリーンに四隅を囲まれ、 進行状況を見つめていた。 手を出していないが、 現役の研究者として時折動きたくなっていた。 和弥が東雲を見ると、 東雲も同じらしく時折指が動いては何か数字を呟いていた。 今回は、 瀬戸内も指揮を取るのではなく、 東雲の横に座っている。 次の世代を育てているのだそうだ。 「最近は、何を開発している?」  東雲は、和弥の開発には興味は無かった。 全力で、流々の計算を追及していたのかもしれないが、 毎年、論文はトップ争いをしている。 「最近は、防護服を考えている。 人の皮膚に近いもの、かつ、宇宙に対応するもの。 それと、 永久燃料を救命ボートに搭載する事。 あと、外宇宙にホロスという星がある。 ホロスでは時間によって重力が変わる。 現在、調べたデータでは、 電磁的な影響で重力が変化すると踏んでいる」
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