第三章 終わる

3/12
前へ
/330ページ
次へ
 スクリーンの一枚に、 成分の表示が数字の羅列になって並んでいた。 その成分は、 人間とは異なる物質を多く含む。 骨が形成されてきたが、 カルシウムでは無く、金属に近い成分になっている。 皮膚も現れては、消えるを繰り返していたが、 時折、 鱗が見えたり、 金色に光ったり銀色になったりしている。 「……チタン製?」  ただの実験だったら、 何もかもが面白いデータなのかもしれないが、 流々という人間を求めている和弥には絶句の連続になっていた。 「神の領域ですね……」  瀬戸内も、成分を見てコメントが出来ずにいる。 瀬戸内は、 情報局の局長として様々な状況に慣れている筈だったが、 時折、 目を手で隠しながらスクリーンを見ていた。  和弥に用意されていた部屋は、 本当は会議室のようだったが、 広い空間に人間は三人しか居なかった。 他のメンバーは忙しく仕事をしているのだろう。 静かな部屋に、 映像は流れているが音は流していない。    和弥は、 不思議な生命体になってしまった人間を、 眉間に皴を寄せて見ていた。 諦めるか、 前進するか。 和弥の脳裏に初めて、 ここで諦めた方が人間として死んでゆけるという文字が浮かんだ。 少なくとも、化け物扱いされる危険性はない。  諦める、そう決めかかった和弥の目の前で、 泥人形が笑顔を浮かべていた。 その笑顔は、幼い子供のものだった。
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加