第三章 終わる

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「生きていると思うか?」  東雲も、スクリーンに問いかけていた。 値はまだ不安定で、 ゆらぐかのように姿も留めていなかった。 「難しい」  和弥も判断が出来ずにいた、 状況だけを見ている立場だからこそ、 じっくりと判断する時間が出来ていた。 迷いが生じたら止めようと、 和弥は出現の前に自分で決めていたが、 まだ止めるとは言えずにいた。 「和弥君、諦めますか?」  泥人形は、溶け出していた。 生命の無かった星には、 植物、そして微生物と次々に生命が生まれていた。 生き物の細胞は、細かく分かれて、 多様な生命になれるのかもしれない。 けれども、 複雑な構造を持つ、 人間に再生する事は無理だったのか。 「土に電気を与えます。最後の不足分を補います」  和弥の指示で、 土の部分に僅かな電流が流された。 溶けかかっていた土は、再び人間の姿に変わっていった。 「家族からお預かりした映像がありますので、 空中に流してください」  思い出して欲しい、かつての姿を。 記憶を取り戻して欲しい。
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