第三章 終わる

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「個人が特定出来た場合は、 破片を与えてください」  土片から人間へ、 破片は遺伝子を持った肉片だった。 研究室で、 個人のDNAを培養したものだった。 肉片を吸収し、融合する。 わずかなアドバイスにしかならないかもしれないが、 繰り返す事により人間に近づけてゆくしかない。 「電気は、安定するまで流し続けてください」  土が、人間に変わるまで、 まだ時間がかかりそうだった。 和弥は、 部屋を出ると、肉眼で星が見える廊下まで移動した。 赤茶けていた惑星が、今は緑に変化している。  和弥が、 廊下の壁に凭れて、 惑星を見つめ続けていると、 東雲も横に来ていた。 廊下に敷かれた濃紺の絨毯に、 グレーの壁が寒そうに感じる空間だった。 「三年は長いな」  流々と過ごした時間は、 短かったが、 再び会おうと待っていた時間は長かった。 「最後まで見ていなくていいのか?」  東雲は、 床にへたり込んでコーヒーを飲んでいた。 和弥も、廊下に座り込むと、 ポケットから携帯電話を取り出した。 最後に流々と話した電話を、 そのままの状態で三年間持ち続けていた。 「最後……  最後は、まだまだ先だ。 今は、五分の確率だろう。 違うか? 東雲」
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