第三章 終わる

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 五分、 どっちに転ぶか分からない状態だというのに、 打つ手はない。 もう少し状況が変化しないと、 怖くて見ていられないのだ。 「拝むか?」  東雲は、首に掛けていたネックレスを取り出した。 「何に? 神にか?」  和弥は、拝む神を探したが、 思い当たる神が居なかった。 そもそも、 無に返ってしまった生命を戻す事を、 許す神が居るとは思えなかった。 東雲が取り出したものも、 文字が刻まれたプレートだった。 「今後、人間には、 全て遺伝子情報で分類された番号が振られるそうだ。 血液型みたいな分類で、 輸血が出来ないとか、組み合わせでの情報が公開される」  東雲は、 首に掛けていた自分のプレートを和弥に見せた。 和弥も、その話は聞いていたが、 まだ自分の番号は調べていない。 「明香利と、一緒に調べる約束をしている」  番号次第では、 明香利と結婚できないかもしれない。 番号には、そういう情報も含まれていた。 「やはり、結婚する予定か?」  和弥は、 明香利と結婚の約束をしていたが、 時期は決めていなかった。 お互いに不自由なく生活できているせいもあるが、 やはりどこかで流々を待っているのかもしれない。
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