ゲーテ

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お話が前後してしまいますが、ウェルテルの物語はゲーテ本人の体験がもとになっています。 後の世で偉人と呼ばれる方々は、物書きに限らず往々にして奇人変人が多く、良くも悪くも多少狂っている部分があります。 ゲーテももちろんその一人だと思います。 彼は七十を過ぎてから、十七歳程の少女に恋をします。 なんならそれを行動に起こしたそうです。 その辺りがやはりどこか違うんでしょうね。 有名なところで太宰治も、彼の半生は天を貫くほどの情熱と、海の底に沈むほどの悲哀に満ちています。 最近では瀬戸内寂聴の自伝を読みましたが、狂おしいほど情愛に生きた方だなと思いました。 正直、死後有名になりゃ許されるのかよ、尼になれば許されるのかよって話ですが、普通の人は小説のネタのために人を殺す人間の話は書けませんし、子供や夫を捨てて愛に生きようとも思いません。 良し悪しは別として、果てしなくぶっ飛んだ、それでいて何よりも繊細な感性を持つ人が、時代を生み、その時代に爪跡を残して行くんだなぁと思いました。 えっと、何の話ですか? よくわかりませんが、こういった方々の生きた世界を知るたびに、自分は極めて平々凡々な人間だなと感じます。 どうせ生まれるなら、岩尾の顔かキムタクの顔のどっちかが良かったと口癖のように言っていた僕にとっては、わりと辛い現実です。普通とか中途半端が一番嫌いです。 だからと言ってなろうとしてなるものでもなく、しようとしてすることでもない。 はみ出したことを狙ってやるほどサムいことはありません。 なので僕はこれからも、死んでも無くせない夢との出会いを夢見ながら、平凡に生きていきたいと思います。 死ぬまでに出会えればいいなぁ。 今までで一番心がざわついたのは、飲食店経営を志した時と、わりと本気でサボテンになりたいと思った時です。
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