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「…海……そうね、私も…此処の人達には色々教えて貰ったわ。だから…助けてあげたい。皆で、一緒に戻りたい…そう、思うの」
「…うん…僕もそう…思うよ…」
恥ずかしそうな海と嬉しそうな波。
相変わらず反対な二人だが、気持ちは一緒。
其処は双子なのだ。
きっといつまでも、一緒。
「よし、皆集まれ。最終確認だ」
ヴィオレットが全員に声をかける。
「…何か何時もと様子が違うと気持ち悪いな…」
ぼそり、と海が呟く。
「海!失礼じゃない!」
「え?あ、ごめん…つい…」
波の言葉に海は苦笑した。
こういうやり取りにはヴィオレットは慣れていた。
「…お前らな……まぁいい。教会の見取り図はこの通りだ。神様とやらが居るのは最深部だろーな。其処まで、全力で行くぞ。ぜってー、教会の奴等の邪魔が入るから、怪我には気を付ける事。後魔法の使い過ぎで、最深部に辿り着いた時には疲れ果ててて、何も出来ない、じゃ意味がないからな?まぁ、んな事は云わなくても判ってるだろうが」
「…じゃあ、行こうか。時間が勿体無いし」
「うん!早く行こっ!!」
ギィィィと教会の扉を開く。
「静か……」
「誰も居ないって訳?」
――カツン…と響く靴音。
「ようこそ。我らが教会へ」
場に似合わない明るい声が暗い教会内から聞こえてきた。
足音の人物だろう。
「ヴィント…!?」
ブラウが驚いたように見つめる。
階段をカツンカツン、と降りてきたヴィントは蒼の髪をかき上げる。
「あぁ、ブラウ…久しいな、君と逢うのは。…ネーベルは残念だったね」
「…やっぱあんた、あの一件に絡んでたのね?」
「ロート…君に逢うのも久しいね。新薬の実験は今でもしてるのかい?」
「あんたに答える事なんてないわ」
「随分とつれなくなっちゃったねぇ…」
ロートは冷たくヴィントをあしらう。
ヴィントはくすくすと笑いながらロートを見つめていた。
「教会のヴィント殿には知り合いが多い事で……私と逢うのは初めてですね。魔法協会の一、ヴィオレットと申します。以後、お見知りおきを…」
「貴方がヴィオレット……成る程ね。…私は司祭、ヴィント=シュレヒト。宜しくお願いしますよ」
ロートからヴィオレットに視線を移し、ヴィントは一礼した。
「ところで俺…いえ、私達は神様に御用があって来たのですが?」
あくまで礼儀正しくヴィオレットが言う。
その様子にヴィントは笑う。
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