第1章

4/7
前へ
/7ページ
次へ
「…海……そうね、私も…此処の人達には色々教えて貰ったわ。だから…助けてあげたい。皆で、一緒に戻りたい…そう、思うの」 「…うん…僕もそう…思うよ…」 恥ずかしそうな海と嬉しそうな波。 相変わらず反対な二人だが、気持ちは一緒。 其処は双子なのだ。 きっといつまでも、一緒。 「よし、皆集まれ。最終確認だ」 ヴィオレットが全員に声をかける。 「…何か何時もと様子が違うと気持ち悪いな…」 ぼそり、と海が呟く。 「海!失礼じゃない!」 「え?あ、ごめん…つい…」 波の言葉に海は苦笑した。 こういうやり取りにはヴィオレットは慣れていた。 「…お前らな……まぁいい。教会の見取り図はこの通りだ。神様とやらが居るのは最深部だろーな。其処まで、全力で行くぞ。ぜってー、教会の奴等の邪魔が入るから、怪我には気を付ける事。後魔法の使い過ぎで、最深部に辿り着いた時には疲れ果ててて、何も出来ない、じゃ意味がないからな?まぁ、んな事は云わなくても判ってるだろうが」 「…じゃあ、行こうか。時間が勿体無いし」 「うん!早く行こっ!!」 ギィィィと教会の扉を開く。 「静か……」 「誰も居ないって訳?」 ――カツン…と響く靴音。 「ようこそ。我らが教会へ」 場に似合わない明るい声が暗い教会内から聞こえてきた。 足音の人物だろう。 「ヴィント…!?」 ブラウが驚いたように見つめる。 階段をカツンカツン、と降りてきたヴィントは蒼の髪をかき上げる。 「あぁ、ブラウ…久しいな、君と逢うのは。…ネーベルは残念だったね」 「…やっぱあんた、あの一件に絡んでたのね?」 「ロート…君に逢うのも久しいね。新薬の実験は今でもしてるのかい?」 「あんたに答える事なんてないわ」 「随分とつれなくなっちゃったねぇ…」 ロートは冷たくヴィントをあしらう。 ヴィントはくすくすと笑いながらロートを見つめていた。 「教会のヴィント殿には知り合いが多い事で……私と逢うのは初めてですね。魔法協会の一、ヴィオレットと申します。以後、お見知りおきを…」 「貴方がヴィオレット……成る程ね。…私は司祭、ヴィント=シュレヒト。宜しくお願いしますよ」 ロートからヴィオレットに視線を移し、ヴィントは一礼した。 「ところで俺…いえ、私達は神様に御用があって来たのですが?」 あくまで礼儀正しくヴィオレットが言う。 その様子にヴィントは笑う。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加