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ふと、湖面の水鏡に目を移す。
そこには、主と新たな使い魔が映っていた。
それも、ネオンと実力が近く、互いに競い合っていた使い魔で。
負けたという感情と奪われたという感情が溢れて、「ああああああぁぁぁぁああ!!!!!!」という叫びと共に堪えていた涙が、堰を切ったように溢れだした。
それからひたすら、泣いた。
時間も忘れて、ただただ、泣き続けた。
気づけば、ラスタが迎えに来る日へと変わっていて、ネオンは途方にくれたのだった。
水鏡は、主と新たな使い魔を映し続けていた。
ふと、視界がぶれる。
そして、新たな使い魔だけが映り、何かを喋り掛けてきた。
映像しか映らないが、唇の動きで何を言ってるのかわかる。
相手の表情から、自分を挑発してるのは明らかではあったが。
『私が見せた幻で泣いてる暇があるのなら、早く帰ってきて、私と戦いなさい。勝手に隠居なんて許さないからね』
そう、彼女はネオンを罪人にしないために、水鏡の魔術に介入して、気持ちの区切りをつけさせようとしたのだ。
自分が介入すれば、ネオンが奮起するのではないかという望みにかけて。
張り合う相手がいるからこそ、高みを目指せるということを彼女はよく分かっていたから。
それを見た瞬間、何かが落ちた気がした。何かは分からないけど。
主への恋慕は残っているけれど。前に向いて、歩かなければいけないような気がした。
ネオンはうつむきながらも立ち上がった。
「帰らなければ」──その気持ちが芽生えたのだ。
ネオンはまた、新たな主人を探すため、召喚の時を待つ場所である使い魔の故郷へと向かって転移した。
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