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月属性云々という謎な話よりも、瀞にとっては余程、根源的であるその秘密。それを何故知っているのか。
これが酒の上の悪夢でないなら、思考のぶっ飛んだ化け物には尋ねるだけ無駄だろう。そもそもたとえ女だって、見知らぬ相手といちゃいちゃしたくはないだろうに。
とにかく瀞は生まれた時から、この女の体と本当の自分は違うと感じて育った。親元を離れたのも「男として生きたい」からだ。
「えええー。お前、オレと同じで、オレっ娘なのかと思ってたのにい」
それはむしろ、オマエがどうなってるんだ。言われてみれば先程までの自称死神は、オレ口調でさえなければ、どう見ても女の子だった。
そんなわけで、おれは男だと訴える瀞に、紫音が困ったように考え込んだ。
「まいったなあ、月属性って陰なのに、陽も強いところまでオレと同じ宿命か……陽って男度って言うし、陽光が強まれば反射する月光も強まるわけか、それでこの月虹かあ、しまったなー……」
謎だらけの化け物事情を口にしているが、一応悩んでくれている。それに安心しかけたが、他人事という顔の烙鍍が、くっつく体は離してくれたものの、最悪な合いの手を入れてきたのだった。
「そんなこと言っても、一度植えた羽を回収しようと思ったら、もう殺して奪うしかなくなるけどな?」
烙鍍の言う通りだと紫音は悩んでいる。そんな大事なことは先に説明しろと瀞は呪った。「二週間働いて二週間休む」契約の通り、瀞も体を使うことはできるらしいが、紫音が瀞から出て行くのは難しいという。
そして紫音は、烙鍍といちゃいちゃしたいのだ。そのために体を探したのに、これでは本末転倒になる。諦められない、うううう、と悩んでいる。
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