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ゼロの勧めで、ローカル列車に乗った零の周囲にはほとんど人がいない。
本能通りに生きる零は、魂を失くした十八の歳から、あちこちでぶつかってきた。ヤンキー達に慕われているのもその延長だ。
それでも知性は人一倍だったので処世はできた。ヒトがありのままに生きれば動物と大差はなく、それはそれで、無様に思ったからだった。
たとえば今、傍目には一人旅である零の席の背もたれを掴み、馴れ馴れしく話しかけてくる見知らぬ男性。ここにゼロがいなければ「死ね」と返して会話を終わるか、つっかかってこれば実力行使に出る。
誰とも話したくない零に無闇に話しかけてくる者が悪い。でもその対応を実行すれば、世間的には零は傷害罪に問われる。
「……」
なのでガン無視していたら去っていった。後ろ姿を見たら感じの良い老人だった。孫娘にでも話しかけている感覚だったのだろうか。
ゼロが溜め息をついて大袈裟に両手を組んだ。
「話の内容くらい聴けば、お前」
「知るか。知らない奴に何で関わるんだ」
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