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「……次に見付かった時、どんな高値でも購入して、お前に贈るよ」
「…ヴィント……あ、ありがとう…」
ヴィントが優しく告げると、ロートは嬉し恥ずかしそうに笑った。
この世界では一種の婚約の証。
それを貰うという意味は――。
ロートは正直に嬉しかった。
「只今~…っと……ロートのその顔…決まったんだね~♪」
ネーベルとブラウが帰ってくる。
帰ってくるなりネーベルがにやにや笑いながらロートを突っついた。
「ネ、ネーベル!恥ずかしいからあんまり云わないでよ!!」
「はいはい、ごめんなさーい♪」
焦るロートに軽く笑ってネーベルが謝った。
だがネーベルも嬉しそうだ。
「決まった?って、何が?」
「鈍感なお兄ちゃんは放って置いて…と…。おめでとう、ロート♪」
ロートの頭へ、シロツメクサで作られた花冠をネーベルが置き。
「…ネーベル…ありがとう…」
「ヴィン兄!ちゃんとロートの事面倒見てなくちゃ駄目なんだからねっ!?」
微笑むロートを他所に、ネーベルは叱りつけるようにヴィントに言った。
「ネーベルはまるで俺の母親みたいだな」
「つーか、俺だけ置いてけぼりにすんなよー!」
くすくす笑うヴィント。
その三人の様子にブラウが少し苛立ったように声を上げた。
「おぉ、悪いな。お前を構ってる暇もなくなったんでね」
「はぁ?何だそりゃ」
「何れ判るさ」
「さぁ、おやつにしよっ!今日のは自信作なんだからっ!!」
ヴィントの意味ありげな発言も意味不明と言った感じのブラウ。
そんな兄をほっといて、妹・ネーベルはお茶菓子を広げた。
・・・・・
「…ロート…俺等は確かに違う道を歩んだ……だけど、二度と戻れない事なんてあるのか?」
「…ヴィント…」
ヴィントが何処か哀しげに言う。
ロートは何を言おうか考える余裕すらないのか、言葉が紡げなかった。
「おい、勝手に話を進めんな!俺はお前を許したりしない…あの日……あの日、お前が教会にさえ行かなければネーベルは助かったんだ!お前がネーベルを殺したんだ!!」
横から出てきたのはブラウだ。
ネーベルの名前を聞けば、ヴィントはロートからブラウへ視線を移した。
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