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「…許してくれなんて云わない。何より…お前が先に裏切ったんじゃないか。俺達は皆で教会へ行く話になってたよな?派閥に入れるのは15歳からだ。だから、ロートが15になるまで待って、それから皆で教会に入ろう、って約束しただろ?ネーベルも賛成してた。だけどお前はそれを違えて、魔法協会に入ったんだ。…俺の所為だけにするな」
「それは…だけど、仕方なかったんだ!ネーベルが病気になって…魔法協会のヒーラーに治して貰わなきゃいけなかったんだよ!ヒーラーに手当てをして貰えるのは、その派閥の人間とその家族だけ…だから俺は…!」
「ブラウ、ヴィント、もう止めてよ!こんな話、ネーベルが嫌がるだけじゃない!!」
ブラウとヴィントの言い合いにロートが涙声で止めに入る。
死んだネーベルも、これでは浮かばれない、と言わんばかりに。
「…ロート…」
「……悪い」
「ヴィント…あたし達は教会へは入れない……だけど、神様を放って置く訳にいかないの。判るでしょ?…だからお願い…其処をどいて」
「…ロートの頼みでも、其れは聞けない」
「ヴィント…」
ロートの説得空しく、ヴィントは場を開けるつもりはないらしい。
いや、開けれないのだろう。
彼にも彼の立場がある。
「あぅ~…八方塞がり~?如何したらいいわけー!?普通の攻撃じゃ刃が立たない、幼馴染の頼みも聞いてくれない!如何しようもないじゃん~!!」
「ゲルプ、落ち着いて」
「だってだって~!!」
混乱するゲルプを宥める由佳里。
何か。
何か一つ突破口があれば。
誰もがそう祈っていた。
それこそ【カミサマ】に――。
「…き…椿…」
『姉さん!?でもまさか…こんなトコロで…?』
唐突に聞こえてきた姉の声。
でも、いつもよりはっきり聞こえた。
「…闇の力で、動きを封じて…その後、火・水・風・地の力を一点に集中させて放って……そうすれば彼は…動けなくなるから…」
寂しげな声だった。
でも椿は――
『姉さん……判った、あたし、信じるから』
決意したように魔法書を取り出した。
「海君!この魔法を使って!」
椿は海に魔術書を投げた。
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