第1章

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郷ひろみのモノマネをして歌っているのか地声なのか謎だが、間違いなく店長が生で歌っていた。 小さな箱の中の店長が、慣れた手つきで左手にマイク、右手で電卓を叩いて伝票計算している姿が目に焼きついて離れない。 はじめて来たお店のトイレで失礼ながら、尿意をもよおすほど爆笑した。 着物を着た上品なママは涙を流して爆笑していた。 一頻り大笑いし、呼吸を整えるのにかなり時間が掛かった。 店長に見つからないように、また姿勢を低くして店の奥まで忍者のようなフォームで戻り、テーブルに着いた。 翔子さんが、お客さんとたまきさんに報告している間も、しばらく笑いが収まらなかった。 爆笑のタネってどこに転がってるかわからない。 一緒にいったお客様は、「プロ中のプロだな。」と冷静に評価していた。 私たちの間で、あのお店の店長は伝説となった。 いまでもあのときの光景をたまに思い出しては噴出しそうになる。
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