第1章

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私には父親がいない。 父親の顔も知らない。 だからと言って、自分は可哀想な子だ、寂しい、辛いなんて思ったことは一度もなかった。 そんなことで周囲から哀れんだ目で見て欲しくなかった。 いないものはしょうがない。 バラ珍とかいう人探しの番組で、顔を見たこともない実母を探して。 とか、何十年も会ってないのに、会いたいと思う人の気持ちが理解できなかった。 こう思う時点で、私は普通の人とは考えがズレていて、屈折している部分があると思う。 母親は、一人で私を育ててくれた。 夜、働きに出かけていた母は、私を1歳から託児所に預けていた。 託児所で晩ご飯を食べ、預けられている子供たちと遊び、就寝する。 母親が休みの時以外は、毎日預けられていた。 あんなに小さかったのに不思議だが、その時の忘れたい嫌な記憶が残っている。
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