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ポケットに忍ばせていたカッターをソイツの左横腹に躊躇なく突き刺す。肉を貫く嫌な感触がした。
カッターを引き抜くと、奴は刺された場所を抑えて膝まづいた。僕はその瞬間を狙って、何度も、何度もカッターを振り落とした。
ざまぁみろざまぁみろ!
彼女に手を出そうとするからいけないんだ。殺そうとするから…お前が殺されるんだ!!
無我夢中で刺し続けた。
でもふと、我に返る…
フードの隙間から見える髪の毛が長い。
そしてその髪の毛は、彼女のものと同じ栗色で、フワフワとしている…
「あ…ぁ…」
違う。そんな筈がない。
僕は震える手をフードに近付けた。血を吸ったせいか、フードがとても重い。
嗚呼そんな…嘘だ…違う、違う有り得ないだって僕は彼女を守りたくてそれで…
めくったフードから覗くのは、僕の大好きな彼女の顔。虚ろで、何も映さなくなった…瞳。
「ぁ、ぁ…あぁああぁぁああぁあああああ」
僕の瞳からは止めどなく涙が溢れてくる。どうして…どうしてこうなってしまったんだ…!?
罪悪感よりも、もう彼女が居なくなってしまったことが悲しくて仕方が無い。もう会えないし、もう話せない…僕のせいで…
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