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肩ごしに旅客機が大きな腹を見せて飛び立って行く。
いや、
降り立つところなのか。
車中の窓から見えた姿は大きくて、
見る者が見たら一種の感動と驚きに満ちているのかも知れない。
あちらからすれば、
ちょっとした旅行気分のつもりなのだろうが、
こちらにしてみれば単なる里帰りである。
つまりお互い何も知らなかったという事実が露見した訳で。
そろそろ午前中の講義が終了する時分だろうか。
落としたくない単位のものが一つあったのだが、
今更どうにもならない。
溢れる勢いの想いを抱えた准教授に拉致され、
その運転で高速道路にのって、
田舎という名の地元まで連れて来られた挙げ句に、
まさかの車中。
真昼の月が青空に浮かんでいる。
この場所は数年前まで日常風景だった。
子どもの頃はなかった展望台に人気はなく、
駐車場に、
乗ってきた黒い車以外には目につく青い車が1台だけ。
既視感とふいの目眩に、
覆い被さっていた准教を押し退けて、
何か喚いているのを黙殺した。
それからドアを開けて、
助手席から転がり降りる。
地元から出て大人になったつもりでいたけれど、
やっていることは子どもの頃と同じじゃないか。
どこにでも行けて、
何でもできると思っていたのに。
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