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まだ五月だというのに蒸し暑く杉谷の額に汗が滲む。買い物袋を手にした彼は夕日に照らされオレンジ一色に染まった街並みを歩いていた。袋の中には幾つものインスタントラーメンと冷凍食品の袋が詰め込まれている。
「これからどうすっかな」
アパートに向かいながらこれからのことを考える。普通なら少女を警察に送り届けそれで解決できるかもしれない、だが杉谷はそうしようとしない。
理由はある。もし仮に警察に向かったとして事態をどう説明する? ランプをこすったら突然中から全裸の少女が出てきたので保護してください、なんて言えるわけが無い。
そもそも信じてもらえるとも思わないし、下手すれば優しく頭の病院を勧められるかもしれない。もっとも、そんな理由がなくとも杉谷が少女を見捨てたりすることは無いだろう。
基本的にお人好しである彼は、たとえ見ず知らずの他人であっても困っている人を見過ごせない性格をしている。そんな彼が、たかが記憶喪失の少女ぐらいで音を上げる筈がなかった。
「…………ま、帰ってからゆっくり考えるか」
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